2000年問題の思い出

インターネットが一般社会に認知され始めてから5年くらい経った西暦2000年、世の中はミレニアムだの終末思想だの2000年問題などで世の中を賑わせていました。あれから20年以上経ち、あの頃のことを思い出す事が多くなったのですが、私的に史上最大の肩すかしであった「2000年問題」を書いてみようと思います。

1999年12月31日、世の中(の一部)は緊張のピークに達していた

2000年まで後1日のこの日、一般人にとっては記念すべき2000年を迎えるただの大晦日だったのですが、我々コンピューター関係の企業に勤めている人間にとってはまさに「ノストラダムスの大予言とはコイツの事だったのか?」と思いたくなるような問題が迫ってきていたのでした。

そう、2000年問題。

古い時代に設計されたシステムは、日付のデータが97/02/15(1997年2月15日)のように下2桁だけで記載された物が多くありました。

誰もそのシステムが10年20年と使われる事を想定していなかったのか、それともプログラムの容量的に省略したかったのでしょうか。

99に1を足すと100になりますが、そうなると3桁になり、2桁では処理できず計算結果がオーバーフローになり、これがプログラムの暴走、システム停止を引き起こすトリガーになるのでは?と考えられ、ソフトウェア会社は2000年が来るまでに既存システムの修正に追われる毎日でした。

当時企業で使われていたPCやシステムは、今のようにWindowsベースで動いている物ばかりでは無く、各メーカーが独自のシステムを独自のハードに組み込んだものが多かった記憶があります。

これが我が社のスタンダード!基準?何それ、と各社で統一された日付時刻記入法なんてものが存在しなかった事も、この騒ぎを大きくしてしまった一要因だったのでしょう。

1999年12/31、この日私は顧客に自社が納入したシステムの監視とトラブル発生時の対応を頼まれました。

納入したシステムの名前は忘れたましたが(赤い筐体)MSーDOSに似たOSで動いてた基盤を組み合わせただけのPCもどき、みたいなシステムが無事年を越せるかどうか監視をしなければならなかったのです。

うちの会社の製品ではないけれど、うちが買って納入したもんだから面倒見なければならないという理不尽。

この叩いたら壊れそうなPCもどきは結構重要な制御部分を司っているらしいですが、若手だった私は、自社製品でもないこいつの細かい所まで覗いてアレコレする技術なんて持ち合わせていなく、せいぜいDOSコマンド打ってファイルの操作くらいしか出来なかったのです。

日付を昔に戻して10年前にして、「年数から10引いて見てくださいーw」というのは簡単でしたが、上位のデータとミスマッチが発生する為それは不可能との事。

そして来ました23時55分。

関係者数人がオペレーションコンソールに向かって仁王立ちし、その上司らしき人は書類を持って右往左往。後5分で予想だにしなかったトラブルがあちらこちらから出るはずで、緊張の具合が凄まじく、若くて技術的に未熟だった私も「このまま時間よ止まってくれ」などと考えていた記憶があります。

117に電話して、時刻を聞き腕時計を修正。後2分、どうなるんだろこれ。

何かあった時にシャットダウンする以外に出来る事とかあるんだろうか?

そんな事を考えても時間は容赦なく迫って来ます。

時針分針が23時59分を指し、秒針が0を過ぎてカウントダウンに入ると緊張感がmaxに。私も画面を凝視しながら秒数が進むのを見ることしか出来ません。

23時59分59秒から1秒が過ぎて

そして運命の時。秒針が1回りして2000年1月1日0時00分。

TVは「ハッピーニューイヤー!!」とかなんか騒がしかったけど、我々はそれどころではありません。

色々な所をチェックし、無事かどうか、収集したデータの日付、上位の伝送など全て確認したところ・・・全くの問題なし。

年数下2桁は00になったものの、プログラムは正常に動いていて、普段と何も変わらず。

私は胸を撫で下ろしました。何かあっても手に負えないし、どうしようかと思いましたが見事な肩透かし。

オペレーターの方々も「なんだ何もなかったな」「騒ぎ過ぎたなw」などと言って談笑している始末。

報道などでは一部の会社で設備が止まったとかありましたが、自社が担当しているものは運よく何事もなく稼動し続けてくれたようです。

2000年問題が終わり会社に戻って

会社に報告書書きに戻ったのが午前2時。

私が帰社した時には殆どの人が戻って来ていて、一様に何事もなかったと言っておりました。

あれだけ世間を騒がせ、ノストラダムスの大予言=2000年問題なんて言われてたら誰だって不安の方が先走ってしまうのでしょう。

こんな事を書いていると、国内でコロナウイルス患者第一号が見つかった時のことを思い出します。

某巨大掲示板では日本壊滅する!とか今すぐ鎖国しないとみんな死んじゃう!とか騒いでるのがいましたが、そんな無責任な雑音に刺激され、マスクを買いに行列に並んだり他県ナンバーの車を攻撃したりする人間も現れました。

日々の生活を脅かす存在がいきなり現れ、それがもたらすリスクを思い浮かべると、現実はどうあれ人間というのは過剰なリスク対策をしたがる生き物なんだな、と思います。

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