そろそろ3月も終わり、新年度が始まります。今年も新入社員が入ってくる時期か・・・と咲きはじめた桜を見ると、私が入社した時の事を思い出します。入社時に1ヶ月程度の研修があったのですが、その中で「団体行動訓練」というのがあり、某所の研修所に2泊3日でそればかりを延々とやらされる意味不明な訓練がありました。
希望に胸を膨らませ入社したのはいいのだが
4月1日に入社式があり、顔も名前も知らない同期の人間に囲まれ、社長や幹部のありがたいお話を聞きながら社会人1日目をスタートした訳ですが、入社式の後、研修スケジュールなる物を渡された私は、そのスケジュール表のある一点を凝視していました。
「4月○日 団体行動訓練 場所:某県○○研修所」
なんだこの団体行動訓練って。前へ倣えとかやり続けるのか?
しかもこの研修は他のビジネスマナーだとか各種の教育よりも随分前に設定されているのです。
「こんな事やらんでええのになぁ・・やる必要あるか?」
研修の内容も現時点では分からないのであまり多くは考えなかったのですが、まぁ何か研修旅行みたいな物だろうとあまり重要視していませんでした。
地獄の2泊3日団体行動訓練が始まった
入社式から1週間程度経ち、いよいよこの団体行動訓練の日がやってきました。
同期とは何日か顔を合わせ続けている事もあり、研修所に向かうバスの中はもう遠足気分で、これから起る事すら知らず、楽しくワイワイと世間話に華を咲かせ、酒でも有れば楽しいのにな、でも一応就業時間中だしな、なんて事を考えてた記憶があります。
研修所に到着し、渡された作業着とやらに着替えて寛いでいると、いきなり教官役の人から怒号が。
オラああああ集合だ!!駆け足!早く並べ!!
呆気にとられる間もなく全員が小走りで一列に並びます。
今日から3日間、団体行動訓練を行う!3日間でお前らに団体行動の大切さをしっかりと仕込むのでしっかりついて来い!
何が大切なのか、何の役に立つのかまずそこから話せよ・・と思う間もなくまたもや教官の怒号が飛びます。
気をつけ!!!回れ右!!!
・・・おいおい、まさかこれ3日間やるのかよ、もっと他にやらなければならない事あると違うんか、心ではそう思っていても口には出せません。
この教官の周りには似た様な目付きの小指が有るか無いか確認したくなる様なゴツいお兄様方が何人か並んでいるのです。
そして何回かの号令の後、今度は個別で確認。1人づつ回れ右だの右むけ右だのを何度もやらされ、また再度全員で。
勘弁してくれよ・・・と思いつつも仕方なくやっていると、後ろの方で誰かが回る方向を間違えたらしく、
はい間違い!!!全員でもう一回最初から!
マジかよ何やってんだよ・・・と思いつつも、自分が間違えたら白い目を向けられるのは間違いないのでもう必死。
いいか!1人のミスは皆のミスだ!他人の事を想え!
自分勝手が如何に他人に迷惑を掛けるかこの3日間で思い知れ!
当時(平成一桁年)はまだ「パワハラ」なんて言葉が一般的に周知されておらず、今同じことをやれば大問題になるでしょうが、当時はやりたい放題時代の末期であり、そういう事を研修として扱う企業も多数存在しました。
それから昼食まで延々とこの「団体行動訓練」とやらは続きました。
そしてくそ不味そうな昼食を取りテーブルに着いて誰からともなく食べ始めるとまた教官の怒号が。
お前ら!午前中何を学んだ??箸を置けぇええ!
今度は何だよ、と思っていると全員が着席し、リーダーの号令の後に食べ始めろ、食べ終わって食器を片付ける時も全員で!としょーもない事を大声で言うのです。
いいか!この2泊3日、一瞬たりとも気を抜くな!いつでも俺らが監視しているぞ!
もう勘弁してくれよ・・とうんざりしながらもこの研修は進んでいき、昼からは何列縦隊?だか難しい動きが入ってきてエスカレート、間違う人も増えて行きまた最初からやり直し・・・、泣きそうになっている人も何人か見かけましたが慰める余裕なんてありません。
1日目の終わりには研修所の周囲を足並み揃えて行進、足並みが乱れると
はい!残り時間1分追加!夕食無くなっちゃうぞお前ら!!
もう反抗する気力もなくなり、自分だけはミスしないように、皆に歩調を合わせて・・・と無心でやっていました。同時にこの会社に入社した事を激しく後悔したのです。
そして終わった団体行動訓練研修
そんな中で事件が発生。同期の1人が初日の夜に研修所を抜け出し行方不明になったのです。研修担当の当社社員は大慌て。逃げて家に帰っただけだから心配せんでもええよ、と思っていましたが、後日聞いた話ではやはり家に逃げ帰り、同時に会社に退職の旨伝えたらしいです。
2日目も朝から晩まで延々と続き、2日目の夜は延々と研修所のある敷地内を行進、疲れが見え始めたな、と思ったらまた並んで団体行動訓練。
もうだめだ、帰ろうかな、もういいかな、でも折角入った大企業だしな、こんな思考がぐるぐると脳内を駆け巡ります。
私は期間中、この団体行動訓練とやらの意味をずっと考えていました。
1人のミスは皆のミス、それはわかるがそれを教えるならもっと違うアプローチでもいいのでは?
集団の中で1人だけ進んだり遅れたりは許さんと言うこと?
伸びる人は伸ばして、遅れる人は切り捨てればいいのでは
そんな事を考えながらこの団体行動訓練とやらの最終日を迎えました。
最終日には教官の挨拶があり、半泣きになりながら「お前ら!よくやり通した!この経験を今後の社会生活に云々〜」と暑苦しそうな想いで語り、聞いている人間も感動して涙目の人が何人かいるような状態を冷めた目で見ていたのです。
団体行動研修の真の目的とは
研修が終わった後、「これは軍隊だ!」「俺らは自衛隊に入った訳ではない!」と
社員からクレームが来た様ですが、新入社員担当はそれには何も応えず粛々とスケジュールを進めて行きます。
あの研修が何の役に立ったのか、といえば未だに分かりません。
ですが入社後数十年の間に新入社員教育を担当した事があり、その時に初めて分かったのです。
(管理側から見て)管理しやすい人間を作る
民間企業が入社研修などで団体行動研修を行う最大の理由はこれです。
そしてこれが最も要求されるのが上位下達に例外を認めない所、例えば自衛隊とか軍隊、消防など高度なチームプレイが存在する所がこれにあたります。
彼らは上官の指示に反して自分の意志で行動する例外なんかはあってはならない物だと認識しています(特殊部隊等を除く)
もしそんな事を認めたら作戦という物が成り立たなくなり、結果味方にも危害が及ぶ結末になったりするものですから、自衛隊などでは一番重視するポイントではないでしょうか。
民間企業の入社時研修は、勝手な事をされると収集がつかなくなり、1人だけ伸びるスーパーマンも何もできない落ちこぼれも不必要であり、運営側から見て全員が横並びであるべき時期なのです。
伸びる人も堕ちる人も、後は職場配属された後勝手にどうぞ、今の時期だけは横並びでお願いね、そうでないと面倒だから(はぁと
というのが団体行動訓練を行う理由でしょう。
ですので運営担当は「団体行動、団体規律が(我々にとって)大事!!」と声を大きくしていうのです。
そんなに大事なら入社後定期的に行わなければならないはずですけどね。
今ではパワハラになってしまいそうな団体行動訓練
私の会社でもいつの間にかこの団体行動訓練とやらは無くなっていました。あの怖いお兄さんがいた研修会社は潰れたとか風の噂で聞きましたが、色々な会社の新入社員から相当なクレームがあったのでしょう。
そして今は私が受けたような強制訓練なんかさせた日にはハラスメントで訴えられるリスクもありますので、企業も二の足を踏んでいます。
流石に今の時代にやっている企業はないと思いますが・・・。
そしてこの様な研修が社員の成長に繋がるかと言えば疑問符が付きます。
研修の目的には「集団行動における意識を云々」と書いてますが、抽象的すぎてよく分からない物が多いです。ここは正直に
管理されやすい人を目指す!
と一言で済ませればいいと思うのですが。
コメント